猿払エサヌカ線 / Sarufutsu-Esanuka-Line

ドローン、その広大なグレーゾーン
HOKKAIDO TRIP WITH DRONE

2017.5.11

ドローンはまさにイノベーション。今までの考え方や限界を覆す「新しい価値」を生みだすもの。
・圧倒的な体験や新しい可能性をもたらしてくれる
・でも危なくて怖くて悪用されちゃう?
・そして法律的に分類や定義が難しくてグレーゾーンだらけ
そんなドローンをとりまく現状を、rajomonの嶺隼樹がまとめました。そして何より、ドローンが映し出す圧倒的な映像美をご堪能ください!

嶺隼樹:rajomon

ここに掲載したのは、北海道の雄大な風景をまとめたプロモーションビデオです。私rajomonの嶺隼樹が昨年9月に北海道を旅行した際に、ドローン(DJI Phantom3)を持って行き撮影を行いました。私は札幌出身の道産子ですが、そんな私でもドローンを通して北海道を見てみると、改めて自然のスケールの大きさや地形の面白さに感動してしまいました。

オロロンライン・苫前 / Ororon-Line

ドローンをとりまく現状(ネガとポジ)

一昨年の2015年は「ドローン元年」と言われ、様々な新機種の発表や諸産業への展開、事件事故も含めて一気に世の中へ認知され広まった年でした。

国内で真っ先に付いてしまったイメージは残念ながら「危ない」、「悪用されそう」というもの。2015年1月にアメリカのホワイトハウスにドローン墜落。同年4月には首相官邸屋上で改造ドローンが発見される事件が起き、国内を大いに騒がせました。そして少年が善光寺でドローンを墜落させる事件が同時期に発生し、ドローンに関しての法規制の機運が一気に高まることとなります(同時期にISILが戦闘の偵察等にドローンを用いるようにもなりましたが、そもそもドローンは軍事兵器として発展したものです)。そういった経緯を経て2015年12月に航空法が改正されドローンの使用規制が始まり、人口密集地域など特定の条件下では国土交通省などへの許可申請が必要となりました。

一方、様々な分野でドローンを用いた新しい取り組みも始まっています。撮影ドローンの世界トップメーカーであるDJI社を筆頭に、法整備をはるかに先行する形で急速に新技術の開発が進んでいます。今後発展が期待される分野は、運送、測量、災害調査、警備や倉庫作業、そしてドローンレースのようなエンターテイメントなど多岐にわたります。箱根の火山活動が活発になったときや、熊本地震、東北と北海道の台風被害でもドローンが災害調査で活用されているシーンをニュースで見た人は多いでしょう。また、ドローンを用いて荷物の配送を行う試みはAmazonが有名ですが、国内でも千葉県などで積極的に実証実験が行われ、実用化へ向けて開発が進んでいます。

このように、ネガティブにもポジティブにも、常に大きな話題として取り上げられるドローン。それは、この技術がもたらす社会へのインパクトの大きさを端的に表していると言えるでしょう。

ドローンへの規制

例えばドローンが墜落して家を壊したり人に怪我をさせるということを、車の交通事故と同等に考えられる人は少ないと思います。車が事故を起こしても車という存在を禁止しろとは誰も言いませんが、ドローンは大きな事故や事件を起こしたら「禁止しろ!」になってしまう。社会におけるドローンへのまなざしは、まだその段階なのです。ドローンは航空法、道路交通法、個人情報保護法、電波法、民法、そしてその地域の様々な条例が入り交じり許可や規制が行われます。法律や専門家間の連携はまだまだとれておらず、グレーゾーンの無限の世界が広がっています。一昨年12月の航空法改正では、特定の条件下での国土交通省や空港への許可申請の線引きが示されました。しかしその規制では、例えば車のような速度制限は無く、国による「正しい」とされる飛行方法も、あくまでマナーとして推奨されているに過ぎません(参照:国土交通省・無人飛行機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール)。同時に必要となる飛行する土地の管理者への申請や、周囲の通行人や近隣住民への通知の必要性などは各々の裁量に任されている状況です。

今回掲載した動画も、可能な限り個人の所有地や国立公園上の飛行は避け、国土交通省指導のマナーなどや一般的な社会道徳に従い、声掛けできるところは声掛けしながら飛行していましたが、それでも「厳密に考えると…」というグレーゾーンがあります。河川や海岸などは無条件にOKというよりは、「明文化して禁止されてない」だけに過ぎません。そのような実態ですが、ドローンメーカーは「ドローンを好きな場所で飛ばそう!」と声高々に謳います。例えばDJIの最新製品であるMavicの公式プロモーションビデオを見てみると、世界中の古代遺跡や街中で、気の赴くままに自由に持ち歩きドローンを飛ばしている映像が展開しますが、当然ながら本来はその土地の管理者への許可申請が必要です。ドローンを規制する法律は国によって全く異なるため、最悪の場合通報・逮捕となってしまうケースも充分想定されます。国立公園等では、ドローンを飛行すると動物、特に鳥類を驚かせてしまう可能性を考慮して規制・禁止しているところが多くみられます。また遺跡のような観光地は、実際には周囲に多くの観光客が行き交っているような状況だと思いますが、そんな人の多い最中で飛行させることには法的というよりも道徳的な問題があるでしょう。

クッチャロ湖 / Kuccharo Lake

※ 掲載した北海道の映像では国立公園やラムサール条約で保護された湖などは敷地外上空からしか撮っていません。

ドローンメーカーが前述のような態度で啓発をしないことも原因の一つでしょうが、私が仕事で接するお客さんの中には「無許可で良いから飛ばしちゃおう」と気軽に言う人は少なくないですし、あえてマナーを無視して「いつでもどこでも飛ばせます!」を謳い文句にしている空撮業者が一定数いるように見受けられます。

管轄側も産業発展のために柔軟な対応を求めたいところですが、ユーザーやメーカー側も様々な自主規制や譲歩をしていかなければなりません。

結論&まとめ

法律・社会通念・マナー…ドローンの正しい在り方はどのようなものなのか。個人的には免許制のような、操縦者に一定の技能習得と法理解を義務づける枠組み作りは必要だと思っていますが、規制が強まりすぎると産業として広がらず「ワクワク」するような使い方は生まれないでしょうから、線引きはとても難しいと感じています。これから定期的にドローン関係の記事をアップしながら、ドローンについて考えていければと思います。

何はともあれ、北海道(特に道北と道東)は素晴らしいので皆さん是非旅行してみてください!

美瑛町 / Bieicho

筆者

みね 隼樹じゅんき

映像制作会社勤務のディレクター兼ドローンパイロット。ドローンキャリアは2年程度で、飛行時間にして70~80時間。JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)という、ドローンの産業活用や発展を目的とした団体の操縦技能証明/安全運行管理者証明を取得。2016年よりいわき市に通いはじめ、取材を続けている。